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遺(のこ)すということⅠ

 「自分が死んだ後のことには興味がない。残った者たちが好きにすればいい。」という考え方もあろうかと思います。
 一方で、「自分が死んだことで誰かに迷惑を掛けるのは避けたい。残された者に負担を課すのは嫌だし、平穏に生活していって欲しい。」と考える方は多いでしょう。
 よく「最低限自分の葬儀費用だけは残す。」などという言い回しをしますが、これも後者の考え方の一つだと言っていいでしょう。もっとも、「遺産から当然に葬儀費用が支出されてその残余部分が相続の対象になる。」というわけではないので注意が必要ですが、それは別の機会に述べたいと思います。
 さて、後者の考え方であるとした場合、何に気を付けたらいいのでしょうか。
 大きな債務はなく、推定相続人が一人である(例えば配偶者はすでに亡くなっていてお子さんが一人だけいる)ような場合、遺産をめぐる相続人間の紛争を心配する必要がありません。したがって、配慮すべきは資産の引継ぎ・管理がスムーズにできるのかといった点でしょう。例えば、遺産目録を作っておくこと、各連絡先と自分との関係性を一覧表にしておくことだけでも相続人の負担は軽減するものと思われます。実際に、書面にはしていないもののこうしたことは伝えてあるという方は多いです。
 では、仮に、大きな債務があったとしたらどうでしょうか。
 ちなみに、生前の入院費などで未払いのもの(亡くなった月の分など)も債務となって相続人に引き継がれるのですが、通常はそれほど高額にはならないでしょう。ここでは営業のための個人名義での借入金等を想定しています。また、本人名義で借り入れたのではなく保証人になっているだけの場合でも、保証人としての責任は相続人に引き継がれますので大きな債務として承継されることがありますが、このような場合も含めます。こういった債務の場合、生前に整理しておきたくてもできない、あるいは相続人に引き継がれるべきプラスの財産の形成に寄与しているという特殊性があり、単純に「責任をもって支払っておくべき。」などとは言えないからです。
 このような場合、生前から推定相続人との間でしっかり話をしておくべきでしょう。そして、できれば債務の内容・額を示すだけではなく、遺産承継全体について計画をたてるべきです。場合によっては、生前贈与や遺言しておくことも必要となるでしょう。特に、事業を承継させたいと考えているのであれば避けては通れない問題となります。
 もちろん、こうした事前の話し合いが無い場合でも、相続人としては限定承認・相続の放棄といった手段によって債務の承継の問題に対処することが可能ではあります。
 しかし、相続人に対する不意打ちが望ましくないのは明らかですし、債務の存在を知らされていないために相続放棄を検討する機会を失う可能性だってあります。
 難しい話のように思えるかもしれませんが、実は当たり前のことです。
 相続というのは、「死亡」という人間には必ず訪れるけれどいつ訪れるかはわからない偶然の事情により生じるものです。つまり、偶然の事情により「債務」を相続人に押し付ける可能性のあるものです。だとすれば、しっかり説明して事前・事後の対応を一緒に検討しておくのが、少なくとも「自分の死亡により迷惑を掛けたくない」という立場であれば、自然なことだと思われます。
 「遺す」ということをどう捉えるかは自由ですし、そもそも遺される側との関係が生前から良好だとは限りません。が、遺される側への配慮をするのであれば考えるべきことが色々あるとは思います。
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はじめに

 人は生きていくうえで他人・社会と関わり合いを持たざるを得ません。
 そして、何らかの関わり合いがあるかぎり、利害が衝突して紛争に発展することがあります。
 例えば、ここでいう「他人」には全くの他人ばかりではなく家族・親族も含まれるのですが、親族間で遺産分割協議がうまくまとまらないということがあります。
 もちろん、利害衝突があるからと言って必ず紛争に発展するわけではありません。ほとんどの相続のケースでは、亡くなった方と各相続人の生前のつながり等を踏まえてお互いに譲るべきところは譲り、うまく着地するものです。
 しかしながら、そうではないケースも確実にあります。そしてその場合、全くの他人ではないだけに過去の因縁などがからんで問題がこじれてしまう事も多いのです。このようなケースで当事者にお話を聞いてみますと、きっかけは些細な事柄でありながら、こじれてしまった段階ではもう冷静に話し合いをすることができなかったりします。
 上のようなケースでは、遺産分割に関する調停や審判といった裁判所が関与する手続きで紛争解決を図ることができます。できはするのですが、やはり親族間にしこりが残るものです。親族であればその後も法事などで顔を合わせることがあるでしょうし、別の相続で再度遺産分割協議の相手方となる可能性だってあります。否応なく関わり合いを持たざるを得ないのですから、再度紛争が生じる心配は常にあります。こうした心配をしなければならない状態というのは決して望ましいものではありません。
 やはり紛争の芽は早いうちに摘んだ方が良いですし、紛争になっても初期の段階で解決してしまった方が良いと思います。
 当ブログでは、問題がこじれてしまった後の解決方法とそうなる前に何ができるかを書いていこうと思います。
プロフィール

マルシン企画

Author:マルシン企画
園芸オヤジでアクアリストな司法書士。

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